大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)33号 判決

原告 花王石鹸株式会社

右代表者代表取締役 丸田芳郎

右訴訟代理人弁理士 宇野晴海

同弁護士 水田耕一

同 中島敏

被告 フェザー安全剃刀株式会社

右代表者代表取締役 高井増市

右訴訟代理人弁護士 川崎友夫

同 大江保直

同 斎藤栄治

同 吉田正夫

同 柴田秀

同弁理士 池端亨一

被告 フェザー商事株式会社

右代表者代表取締役 星野公二

右訴訟代理人弁護士 狐塚鉄世

同弁理士 池端亨一

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

原告は、「特許庁が昭和三五年審判第四九六号事件について昭和五四年一二月一二日にした審決を取消す。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決を求め、被告らは、主文と同旨の判決を求めた。

第二当事者の主張

(原告)

請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、登録第五二二五七五号商標(別紙1のとおり、上中下の三段に緑色と銀色とからなる波形の模様を表わし、中央部の該模様は上下の模様よりも幅を広くし、その中央部を横長楕円状に白抜きにした空間部に左肩部に「花王」、右辺下部に「シャンプー」の文字を黒色で左横書きし、該両文字の中間に、これらより大きく「フェザー」の文字を赤色で右肩上がりで左から斜め右上へ横書きし、該文字を右下中央から右廻りに細長い右上がりの楕円を画きその末端を始まりの下方に重ねた赤色の緑で囲み、横長楕円の下方に左向きの人面に象った三ヶ月を黒で線書きしたものからなり、旧第五類シャンプーを指定商品として昭和三〇年九月一〇日登録出願、同三三年六月二三日、登録第五四五五六号外一三件の商標と連合の商標として登録、同五三年八月二日その商標権存続期間の更新登録がされている。以下「本件商標」という。)を所有中のところ、被告らは、本件商標が旧商標法第二条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものであるからその登録を無効とすべきものであるとして無効審判を請求した。

この請求は、昭和三五年審判第四九六号事件として審理されたが、昭和五四年一二月一二日「登録第五二二五七五号商標の登録は、これを無効とする。」との審決がなされ、その謄本は昭和五五年一月一九日に原告に送達された。

二  審決の理由の要点

本件商標は、その構成が前項に記載のとおりであるところ、その中央に顕著に表わされた「フェザー」の文字は独立して商品識別の標識の機能を有するものであるから、これより「フェザー」の称呼をも生ずる。

次に、請求人らが本件商標を旧商標法第二条第一項第一一号の規定に該当するとして引用する別紙2及び3に掲記の商標等は、その構成から「フェザー」の称呼を生ずる。

しかるところ、これらの商標は、その使用する商品安全剃刀について、本件商標の登録出願前から、広く国内において取引者及び需要者間に知られているものであること及び、そのうち「フェザー」の文字は本件商標と殆ど同一の態様において使用されているものであることは、その提出の証拠によって認めることができる。

そうして、昭和二八年二月二六日請求人らの創立当時の商号の要部を引用各商標の称呼に相応した「フェザー」に変更し、これが請求人らを表わすものとしても広く認識されているものであることも証拠によって認めることができる。

ところで、本件商標の指定商品シャンプーと引用の商標を付する商品安全剃刀とは、同一の場所において販売されることの多く、また同一人において製造されることのあり、かつ美容又は清潔の用に供される関連商品ということができる。

そうだとすると、本件商標をその指定商品に使用するときは商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものと認めざるを得ない。

被請求人は、本件商標は昭和三〇年九月一〇日の登録出願に係り、その指定商品について同三〇年一〇月から使用を開始し同三三年五月以前には被請求人の「カオーフェザーシャンプー」又は「フェザーシャンプー」として、当業者又は購買者間に広く認識されたものであるから、本件商標は旧商標法第二条第一項第一一号の規定に該当しないと主張する。

しかしながら、被請求人の提出にかかる証拠によって被請求人主張のときから本件商標を商品シャンプーに使用しはじめ、広く認識されるに至ったことを認めることができるとしても、それは、本件商標の出願後の使用開始にかかるものであって、本件商標登録出願時には、既に上記するとおりの事由が存する以上、本件商標はその登録出願前から広く取引者需要者間に知られた「フェザー」の称呼を生ずる引用の商標と商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものといわねばならない。

してみると、本件商標は旧商標法第二条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものであって、旧商標法第一六条第一項の規定によりその登録を無効とすべきものである。

三  審決の取消事由

1 審決には、旧商標法第二条第一項第一一号該当性の判断基準時を、本件商標の登録出願時とした違法がある。

審決は、「被請求人の提出にかかる証拠によって被請求人主張のときから本件商標を商品シャンプーに使用しはじめ、広く認識されるに至ったことを認めることができるとしても、それは、本件商標の出願後の使用開始にかかるものであって、本件商標登録出願時には、既に上記するとおりの事由が存する以上、本件商標はその登録出願前から広く取引者、需要者間に知られた「フェザー」の称呼を生ずる引用の商標と商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものといわねばならない。」から、本件商標は旧商標法第二条第一項第一一号(以下「本号」という。)の規定に違反して登録されたものであって、同法第一六条第一項の規定によりその登録を無効とすべきものであると認定し、本件商標の登録出願時を基準として、本件商標が本号規定に該当すると判断している。

しかしながら、登録商標の無効審判において、本号該当性の有無は、前段(商品の誤認)、後段(商品の混同)いずれの場合にも当該商標の登録出願時ではなく、その最終的な登録査定時又は登録審決時を基準として判断されなければならないのであり、登録出願時を基準とした本審決は、その判断の基準時期を誤ったものであって違法である。

2 本件商標は、その登録査定時において、商品の出所につき混同を生ずる虞れがなかった。審決には、右の点の事実認定を誤った違法がある。

旧商標法が、その第二条第一項第八号又は第九号に他人の商標又は標章との類似を不登録事由としているほか、重ねて本号の規定を置いていることを考えれば、本号の「商品の混同」(商品の出所の混同)とは、「商標の類似」とは異った概念であることが明らかである。すなわち、「商品の混同」を生ずるか否かは、単に商標自体を対比的に観察するのでは足りず、当該商標及び引用商標の各々について、その商標選択に至る沿革、関連商標を含めたその著名性、用いられる商品の広狭、商標使用者の営業形態、使用商品の製造者・販売者・需要者の異同、標章自体が創造的なものであるか否か等を、総合的に考察して決しなければならないものである。けだし、「商品の出所の混同」とは、商品の取引過程において生ずる現象であるから、商標の構成自体のほか、商品の取引過程に影響を及ぼす諸般の事情を総合的に参酌しなければならないのはむしろ当然のことだからである。

右の観点に立って考察すると、本件商標の登録査定時である昭和三三年四月七日当時、本件商標を指定商品シャンプーの包装に付して使用しても、引用各商標との間に商品の出所の混同を生ずる虞は全くなかった。

(一) 本件商標の構成は、水平方向に緑色、銀色及び白色から成る波形の模様をあらわし、その中央部に横長楕円状に白抜きした空間部を設けて、その内部左辺に「花王」、右辺に「シャンプー」の文字を黒色で横書きし、該両文字の中間に「フェザー」の文字をやや右肩上がりに横書きして、これを下方に開裂のある右上りの楕円状の赤色の線で囲み、右下方に人面を象った三ヶ月を黒で描いたものからなる商標である。

(二) ところで原告は、昭和七年以降「花王シャンプー」を発売し、そのすぐれた品質によって、戦中、戦後を通じて一貫して多くの需要者の支持を得てきた。その結果、本件商標の登録出願前すでに、「花王シャンプー」といえば、原告の製造、販売にかかるシャンプーを表示するものとして需要者間において周知であった。

原告は、昭和三〇年、シャンプーのニュータイプを発売するにあたり、従来の「花王シャンプー」との継続性を重視し、「花王シャンプー」の商標が蓄積した顧客吸引力を承継する目的をもって、ニュータイプ製品に付する本件商標においても、その中央部左辺に「花王」、右辺に「シャンプー」の文字を横書きにし、右下方に「月のマーク」(人面を象った三ヶ月)を黒で描きだして、ニュータイプ製品が原告の製造、販売にかかるものであることを強調した。さらに原告は、ニュータイプ製品が、従来の石鹸質シャンプーと異り、合成界面活性剤を基剤とし、ペーハー七という完全中性を示す純品であって、製品自体、羽毛(フェザー)のように軽質であるとともに、その使用効果において、毛質をいためず、洗い上がりの毛髪が柔かく、あたかも小鳥の胸の羽毛(フェザー)のような感触を呈する特徴があるところから、右のような感触を強調して、これを「花王フェザーシャンプー」と命名し、本件商標においてもその中央部に「フェザー」の文字を配して、ニュータイプ製品の有する「羽毛のような感触」を需要者に訴えかけたのである。

右に加えて、原告は明治二三年に「花王石鹸」を発売して以来、本件商標登録出願時までに、「花王」の名をし冠た百種類に及ぶ身体洗浄剤を発売し、これら原告製品には本件商標と同様に「月のマーク」が描きだされていた。

また、「花王」は、昭和一四年九月に原告が「花王石鹸株式会社長瀬商会」(同二四年五月「花王石鹸株式会社」)の商号を用いて以来、原告の商号を示す略称としても広く知られていた。

したがって、本件出願当時すでに、取引者・需要者は、本件商標からその商品が著名な「花王シャンプー」の一種類であって、従来からの「花王石鹸」、「花王シャンプー」と同様原告の製造・販売にかかる商品であることを容易に認識することができた。

(三) 原告は、本件商標を付したニュータイプのシャンプー「花王フェザーシャンプー」を昭和三〇年一〇月に発売したが、原告はこの新製品のために全国の新聞、ラジオ、テレビ等を通じて膨大な宣伝広告活動を行った。

すなわち、原告は、株式会社電通を通じて、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞をはじめ全国五〇の新聞及び文化放送、毎日放送はじめ全国三五局のラジオにおいて、「花王フェザーシャンプー」の宣伝広告活動を行い、その宣伝費は二億二、〇〇〇万円に及んだ。

また、原告は、株式会社博報堂を通じて、北海道放送をはじめ全国四〇局のラジオ、日本テレビ、東京放送はじめ全国三五局のテレビジョンにおいて、「花王フェザーシャンプー」の宣伝広告活動を行い、その宣伝費は一億一、五〇〇万円に及んだ。

その他各種雑誌広告、車内広告、駅頭広告、街頭広告、店頭広告など、原告がこの間に行った「花王シャンプー」の広告費用を合算すれば、五億円を超える。

原告は、これら膨大な量の広告において、つねに「花王フェザーシャンプー」と一連に表示して広告をなし、「花王」の部分を除外して、単に「フェザーシャンプー」又は「フェザー」と表示して広告したことはなかった。

すなわち、新聞・雑誌等の広告にあっては、本件商標の中央部分の構成と同じように「花王フェザーシャンプー」の文字を横書きに表示し、かつ「月のマーク」を併せて店告面に描き出すことによって、原告の製品であることを強調した。

また、店頭広告においても、「花王フェザーシャンプー」の文字を一連に表示するとともに、「月のマーク」を必ず併せて描きだした。

次に、ラジオ及びテレビ音声など需要者の聴覚に訴える広告においても、「花王フェザーシャンプー」として一連に称呼し、更には「花王花王フェザーシャンプー」と「花王」の部分を反復称呼して原告の製品であることを一層強調する宣伝方法を採用したことも少くなかった。

右に述べたような、原告の膨大かつ一貫した宣伝広告活動の結果、取引者、需要者は、本件商標を付したニュータイプシャンプーを「花王フェザーシャンプー」と一連に称呼し、また、取引者、需要者がこれを略して「フェザーシャンプー」と称呼することが仮りにあったとしても、前述のような宣伝活動の影響と、数十年に及ぶ「花王シャンプー」各種「花王」製品の著名性から、取引者、需要者はこれを付した商品が「花王」の製品であることをきわめて明確に認識し、その認識を前提として、右のように略称していたのである。したがって、本件商標には商品の出所の混同を生ずる虞はなかった。

(四) 原告が「花王フェザーシャンプー」を販売するや、新製品の品質の優秀さと、「花王」のブランドがもつ信用とが相俟って、業界稀にみる好評を博し、他社製品を圧倒して、たちまち全国シャンプー販売額の過半を制するに至った。

すなわち、「花王フェザーシャンプー」発売の翌年である昭和三一年度(昭和三一年四月一日から翌三二年三月三一日まで)の「花王フェザーシャンプー」の売上高は五億八、一二一万円余に達し、同年の全国シャンプー生産高九億五、一七四万円余の実に六一・一パーセントを「花王フェザーシャンプー」一製品で占めたのである。

「花王フェザーシャンプー」の生産・売上高は、その後も次に示すようにうなぎ登りに上昇した。

昭和三二年度

売上高一二億〇六九二万円余

昭和三三年度

売上高一六億七六四五万円余

このような経過を経て、「花王フェザーシャンプー」の名声は広く世間に知れ渡った。

右のような膨大な宣伝広告活動と商品普及の結果、本件商標の登録査定時である昭和三三年五月以前において、「花王フェザーシャンプー」といえば勿論のこと、仮りに「フェザーシャンプー」と略称されることがあったとしても、これが原告会社の製品であることを直想させるものとなっていた。

したがって、本件商標は、引用商標と商品の出所について混同を生ずるおそれはなかった。

(五) 審決は、本件商標の中央部に配された文字から「フェザー」の称呼を生ずることもある、との一事をもって、直ちに本件商標は、引用商標との間に商品の出所について混同を生ずるおそれがあったと断定している。

しかし、本号にいう商品の出所の混同とは、商品の具体的取引過程において、需要者、取引者が商品の出所について誤認を生ずることであるから、その判断にあたっては商標の構成以外の諸般の事情を総合的に考案せねばならず、更に判断の一資料として商標自体を比較する場合にも、当該商標からその一部をとりだして、その称呼を引用商標の称呼と抽象的に比較するのでは明らかに不十分であって、現実の取引過程において当該商標がどのように称呼され、それがいかなる出所表示機能を担っているかを問題としなければならないものである。

しかるに審決は、現実の取引の場において、本件商標がいかなる称呼をもって宣伝広告され、その結果取引者需要者がどのようにこれを称呼し、かつこれを付した商品がいかなる者の製造、販売にかかるものであると認識されていたかに関して何ら判断を示していない。

(六) 次に、商品の出所について混同を生ずるものとするには、これを付する商品が相互に関連性を有することが必要である。この点、審決は、本件商標の指定商品シャンプーと、引用商標を付する商品安全剃刀とを対比し、両商品は「同一の場所において販売されることの多く、また同一人において製造されることのあり、かつ美容又は清潔の用に供される関連商品ということができる。」と断じて、これをもって本件商標が本号規定に該当することの根拠としている。

だが、右は判断を誤ったものである。

まず審決は、資生堂一社が過去において安全剃刀とシャンプーとをともに発売したことがある事実から直ちに両商品が「同一人によって製造されることがあ」りとして、これを両商品が関連商品であることの一理由に挙げている。

しかし、過去に偶々一社が、両商品を製造した事実があっても、それをもって両商品を関連商品であると断ずる根拠とするには余りにも薄弱である。けだし、当該商標の指定商品と、引用商標の付された商品が通常同一人によって製造される事実があってはじめて取引者、需要者の間にそのような認識を生じ、それぞれ異なる者の製造に係る両商品を同一人によって製造されたものと誤認する危険を生ずるのである。偶々同一人が両商品を製造したとの事実があったとしても、それが一般的な傾向でないならば、商品の出所についての混同を生ずる虞はないといっていいのである。

ところで、審決が引用する資生堂の安全剃刀販売量は、きわめて僅少であって、その売上げ額は年間一億円に達せず、同社の製造販売額に占める割合は〇・四ないし〇・九パーセントにすぎなかった。

また、昭和三〇年及び同三三年当時、シャンプーと安全剃刀の両商品を製造するメーカーは、他に存在しなかった。

したがって、シャンプーと安全剃刀とを、一般に同一人によって製造される商品であるとは到底認めることができない。

(七) また、両商品が同一の場合において販売されることが多いとして、両商品を関連商品であるとした審決の判断にも誤りがある。

本件商標登録査定当時は、現在のようなスーパーマーケットが誕生していなかったためもあって、シャンプーは主に化粧品店で販売され、これに対して安全剃刀は金物・雑貨店で販売されていた。

また、仮りに同一店舗で販売されることがあったとしても、両商品の性質、用途、需要者の相違から同一の売場、同一の商品棚において販売されることはなかった。

両商品には、需要者、用途、商品の性質において明確な差異があった。

すなわち、安全剃刀は、男性がひげを剃るために用いる道具なのであって、その主たる需要者は男性であった。

これに対して、シャンプーの需要者の圧倒的多数は女性であって、男性の多くはシャンプーを使用したことがなかった。

昭和三五年二月に、東京二三区内の男女を対象として行った調査によれば、その調査当時でもシャンプーを使用したことのある男性は五八パーセント弱に過ぎず、残り四二パーセントを超える男性は一度もシャンプーを使用したことがなかった。

更に、右調査によれば、都内二三区内においてさえ、本件商標の出願時にあたる昭和三〇年には、全男性のうち約一七パーセント、登録査定時にあたる同三三年には、約三六パーセントしかシャンプーを使用したことがなかった。

しかも右調査によれば、自らシャンプーを購入する男性はシャンプーを使用する男性の更に半分以下であるから、結局シャンプー購入者は、全男性中、本件商標の出願時(昭和三〇年)では約九パーセント、登録査定時(同三三年)では約一八パーセントに過ぎなかったことがわかる。

これに対して、女性は、本件商標出願前の昭和二八年においてさえ、すでに約五九パーセントがシャンプーを使用していた。

したがって、右の両調査を総合すれば、昭和三〇年又は三三年当時シャンプー購入者一〇人のうち、八人ないし九人が女性であったことが証明されるのである。

また別の調査によっても、シャンプー購入者のうち、東京では九四・四パーセントが、大阪では九一・二パーセントが主婦であった。

右のように、一方が男性用商品、他方が女性用商品と名付けうる程、商品の需要者又は購入者層が異っている場合には、仮りに両商品が同一店舗で販売されることがあっても、需要者、購入者が商品の出所を混同することはないのである。

(八) さらに、両商品には、その性質及び用途に関して重大な差異がある。

すなわち、シャンプーは、動物又は植物性原料を使用し、あるいは純粋に化学合成によって得られる化学製品であるのに対して、安全剃刀は刃物の一種類であって純然たる金属製品である。

このような商品自体の顕著な性質上の差異のために、必然的に両商品を同一人が製造することは通常ありえないこととなり、また需要者の側でも出所の混同を生ずる虞れは生じない。

また用途の点でも、両商品には顕著な差異がある。シャンプーは頭髪を洗浄し、かつこれを保護する目的のために使用されるのに対して、安全剃刀は、ひげを剃って除去する目的で用いられるのである。

(九) 他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるか否かは、取引関係を考慮した極めて実際的・具体的な判断であるから、以上述べてきたことのほか、両商標使用者の営業形態の如何も考慮してこれを決しなければならない。

この点、原告は、石鹸、シャンプー、合成洗剤など家庭用洗浄剤の総合メーカーであるのに対し、被告フェザー安全剃刀株式会社の実態は、殆んど安全剃刀の単品メーカーと云ってよいものであって、刃物等の金属製品以外のものを製造、販売した実績は皆無に近い。また被告フェザー商事株式会社も、フェザー安全剃刀株式会社の製品を販売することを主目的として設立された会社であって、その取扱製品は右とほぼ同様である。

このような営業形態、製品分野の差異に由来して、「花王」の名称や「月のマーク」は、シャンプーを含む家庭用洗浄剤の分野において、原告の製品をあらわすものとして広く認識されているのに対し、被告らの使用する引用商標は、もっぱら安全剃刀に付される商標として知られているにすぎない。

(十) 最後に、商標自体の創造性について触れる。引用商標①ないし⑧は鳥の羽根一枚を単独に又は羽根二枚を交叉させて横長に描いた写実的な図形、又は単に鳥の羽をあらわす英語「フェザー」を、欧文字又は仮名文字で横書きし、あるいは右の図形と文字を組合せ、又はこれに羽根印の文字を付加した商標であって、その図形はきわめてありふれたものにすぎず、また「フェザー」も小学生でも理解できる程度の英語であって、引用商標は何らの創造性をも感じさせない、ありきたりの商標である。

これに対して本件商標は、「花王」(=花の王様)という独創的で優雅な名称に「フェザー」及び「シャンプー」の文字を加え、人面と三ヶ月マークを組合せた意外性のある図形を表示し、さらに三色三段から成る波形を象徴的な手法で描いたものであって、「フェザー」及び商品名「シャンプー」の部分を除いては、その名称、図形のいずれにおいてもきわめて創造性に富んだものである。

したがって、商品取引における諸般の事実を除外して、商標の構成自体を独立に比較しても、本件商標は、その高い独創性の故に、とりわけ「花王」「月のマーク」の部分が需要者の注意力を強く喚起する故に、引用商標に対して明確な識別力を有していたと言わねばならない。

(十一) 以上に述べた理由により、取引者、需要者は、本件商標の登録査定当時、措定商品をシャンプーとする本件商標から、その商品が原告の製造、販売にかかるものであることをきわめて明確に認識でき、被告らの製品であるとの混同を生ずる虞れはなかったのである。

3 本件商標は、その登録出願時においても、商品の出所について混同を生ずる虞れがなかった。したがって、仮に、判断基準時が右登録出願時点と解されるとしても、審決には、右の点の事実認定を誤った違法がある。

審決は、本件商標の登録出願時を判断基準時期とする誤りを犯したのみならず、その判断内容においても、右の時期において本件商標は引用商標と商品の出所について混同を生ずる虞れがあった旨説示して、その判断を誤ったものである。

本件商標は、その登録出願時においても、商品の出所について混同を生ずる虞がなかった。

(一) 本件商標は、昭和三〇年、原告が「花王シャンプー」のニュータイプ製品を発売するにあたり、これに付する商標として登録出願された。本件商標は中央部左辺に「花王」、右辺に「シャンプー」の文字を横書きにし、かつ右下方に人面を象った三ヶ月を描きだすことによって、従来の「花王シャンプー」との継続性を強調し、「花王シャンプー」の商標が蓄積した顧客吸引力を承継する目的をもって選定され、登録出願された。

(二) 「花王シャンプー」は、昭和七年に原告によって発売されて以来、本件商標登録出願時まで二三年間にわたって、そのすぐれた品質により多くの需要者の支持を得てきた。その結果、本件商標出願当時「花王シャンプー」は、すでに我が国のシャンプー界を代表する著名商標となっており、原告の製造・販売にかかるシャンプーを表示するものとして需要者間において周知であった。従って、右著名商標「花王シャンプー」に、ニュータイプ製品の特徴である「小鳥の羽毛のような軽質さ、髪の仕上りの柔かさ」を示す「フェザー」の文字を付加した本件商標によって、需要者は、直ちにこれが「花王シャンプー」の一種類であって、従来の「花王シャンプー」と同様に原告の製造・販売にかかる商品であることを容易に認識できた。

本件商標は、すでに登録出願時においても、商品の出所について混同を生ずる虞れはなかったと言わねばならない。

(三) 本件商標出願時までに、すでに「花王シャンプー」が著名商標となっていたことは、以下の事実によって明らかである。

「花王シャンプー」は酸性白土、椿油の絞りカス、少量の粉末石鹸をふのり液で混ぜて加圧し、二回使用量づつをラクガン状に固めたシャンプーであって、昭和七年に原告によって発売された。

「花王シャンプー」は、高い洗浄力を有していること、二回使用量づつ包装されて使用に便利なことのほか、原告が果敢に広汎な宣伝活動を展開したこともあいまって、多くの需要者に好評を博し、その発売量は、昭和一三年に二〇〇万ダース、同一四年三〇〇万ダース、同一五年五〇〇万ダース、同一六年五五〇万ダースと逐年増加の一途をたどった。

さらに、第二次大戦中も、シャンプーは統制物資としての制約を受けなかったため、自由に販売され、国民は石鹸の不足分をシャンプーによって補うという現象がみられた。

第二次大戦後も、「花王シャンプー」の人気は絶大であり、生産が間に合わず、割当出荷を行うほどであった。「花王シャンプー」の市場占拠率は圧倒的であって、その東京工場の生産高だけでも、全国シャンプー生産高の二七パーセントを占めるほどであった。

原告は、東京工場のほか、和歌山工場、酒田工場においても「花王シャンプー」を製造し、その製造予定量は、和歌山工場月産一五トン(年換算一八〇トン)、酒田工場月産二五トン(年換算三〇〇トン)であったから、各工場の生産高を合算すると、「花王シャンプー」の市場占拠率がいかに巨大であったかが理解できる。

(四) 右に述べた「花王シャンプー」の著名性は、消費者を対象とした各種調査の結果によっても裏付けられる。

すなわち、昭和二六年一一月になされた市場調査において、調査対象女性のうち、五八パーセントが「花王シャンプー」を使用していた。

また昭和二八年二月に、東京都区内一、〇〇〇世帯を抽出して行った一般消費世帯調査によれば、調査総世帯数の五八・七パーセントがシャンプーを使用しており、うち四三・九パーセントまでが「花王シャンプー」の使用者であった。この数字は、シャンプー使用世帯数を分母として計算すると、実に七四・八パーセントに相当する。

かように、長い歴史と豊富な生産高によって、「花王シャンプー」は、日本のシャンプー業界を代表する著名商標となり、需要者間においても、原告の製造・販売にかかる商品を表示する商標として周知なものとなっていたのである。

(五) 「花王シャンプー」の商標のみにとどまらず、「花王」の商標、あるいは「月のマーク」は、シャンプーだけでなく広く石鹸、ハミガキ、化粧水、化粧石鹸等家庭用身体洗浄剤あるいは化粧品の分野において著名な商標であった。

すなわち、原告は、明治二三年にはじめて「花王石鹸」を発売して以来、右の分野において、百種類に及ぶ、「花王」の名を冠した各種商品を発売してきた。

かくして、「花王」の商標は、半世紀を越える長い歴史と、豊富な種類、高い品質によって、需要者の信頼をかちえてきた。

(六) 更に原告の商号は、昭和一四年九月以降「花王石鹸株式会社長瀬商会」、同二四年五月以降は「花王石鹸株式会社」であった。従って、「花王」は原告の右商号を示す略称としても広く知られていた。

(七) また原告は、明治二三年以来、原告の製品をあらわすシンボルマークとして「月のマーク」を使用してきた。「月のマーク」は、時代の流れに即応して常に現代化への努力が続けられてきた。

「月のマーク」がいかに大衆に愛好され、原告の製品をあらわすものとして周知であったかは、顎のながい人の代名詞に「花王石鹸」の愛称が広く用いられてきたことからも充分窺うことができるのである。

審決は、本件商標から「フェザー」の称呼を生ずるとして、これを唯一の根拠に、本件商標はその登録出願時において引用商標と出所の混同を生ずる虞れがあったものと断定している。

しかし、本件商標には、右の著名商標「花王」又は「花王シャンプー」の文字が明確に表示され、かつ「月のマーク」が描き出されていたのである。

そして、本件商標については、指定商品がシャンプーであること、「花王シャンプー」、「花王」あるいは「月のマーク」が、シャンプー、化粧品を含めて広く身体洗浄剤の分野における著名商標であったこと、これに反し、被告らが殆んど安全剃刀単品の製造業者ないし販売業者であって、「フェザー」は安全剃刀に関する商標としてしか知られていなかったこと等を総合考察すれば、本件商標のうち、その流通過程において商品出所機能を発揮するのは「花王」又は「月のマーク」の部分であって、「フェザー」の部分ではないということができる。従って、本件商標の出願時においても、取引者又は需要者が、本件商標を付した商品を被告らの製品であると誤認する虞は全くなかったものである。

審決が問題とする称呼の面においても、本件商標は「花王フェザーシャンプー」と一連に称呼されると解するのが自然であり、もし仮りにこれを略して「フェザーシャンプー」と称呼されることがあったとしても、上記事実を総合すれば、需要者又は取引者は、その商品が「花王」によって製造されたものであることを認識したうえで右のような略称を用いるものとみるべきであって、これは本件商標の出願時、登録査定時のいずれにおいても変わらない。

かくて、本件商標の一部から「フェザー」の称呼のみをとりだして出所の混同を論じた本件審決には、その判断過程に誤りがあり、また結論においても誤りがあると言わねばならない。

(被告ら)

請求の原因の認否と主張

一  請求の原因一のうち、昭和三五年審判第四九六号事件について、その主張の審判がなされ、その謄本がその主張のとおり送達されたことは認める。

二  同二の事実は認める。

三  同三について

1 その1の主張は争う。

審決には、積極的に、出願時を基準にして判断する旨の記載はない。

現行商標法(昭和三四年法律第一二七号)施行前、旧商標法第二条第一項第一一号の判断基準時については、登録査定時であるとするのが、判例、学説の通説であった。

したがって、審決に特に明示するところがない以上、登録査定時を基準として判断されたものと解するのが素直な解釈である。

さらに、審決における事実摘示及び判断の記載からしても、審決が登録査定時を基準として判断していることは明らかである。すなわち、

(請求人の主張の摘示)

「請求人等は、『印が羽根で、銘がフェザーである』商標を、審判請求の二七年前から剃刀に使用していて、その大量生産と大量販売とによって、該商標は本件商標の登録出願前又は登録査定前から既に有名であった。」

「被請求人は、本件商標は昭和三〇年一〇月から使用し始め、登録までの三二ヶ月間、果敢な広告宣伝と盛大な売行きによって有名にしたというけれども、それは、請求人がそれ以前の二三年間粒々辛苦して築いたフェザーの名声に便乗しての宣伝であり、販売であって、便乗行為の積み重ねになるだけである。以上のようなことから、有名なフェザー剃刀と同じ呼び名の、しかも似通った文字フェザーをもつフェザーシャンプーが市場に出れば、当業者でない一般普通の購買者は、それがフェザー剃刀本舗から出したものと思い、商品の出所の混同を生じる。よって、本件商標は旧商標法第二条第一項第一一号の規定に違反して登録されたものである。」

(被請求人の主張の摘示)

「本件商標の登録を出願したのは昭和三〇年九月一〇日であり、登録されたのが同三三年六月二三日であるが、本件商標を付した商品が発売されたのは当該商標の登録出願の翌一〇月であって、登録せられた同三三年六月末日までの足かけ三年間に、株式会社電通及び株式会社博報堂を通じ、ラジオ・テレビ及び新聞を通じた宣伝広告費は概算三億三千五百万円の巨額に達し、その他の広告宣伝費を合算すれば、優に五億円を超すであろうが、この果敢な宣伝広告は、その品質の優良なると相まって業界稀にみる好評を博し、石鹸質シャンプーを一挙に駆逐して、全国におけるシャンプーの全生産販売量の八〇%を独占するに至り、その広告も世上の激賞するところとなり、昭和三二年一一月には毎日商業デザインコンクール総理大臣賞を獲得、翌三三年七月には毎日広告賞を受賞するに至った。その販路も、東南アジアを始め諸外国に及んでいる。

このように、本件商標を付した商品シャンプーは、世上一般の歓迎を受け、全国津々浦々に至るまでその名声は品質と共に喧伝せられ、本件商標の登録前、既に「花王フェザーシャンプー」又は「フェザーシャンプー」といえば花王石鹸株式会社たる被請求人を、被請求人たる「花王石鹸株式会社」といえば「花王フェザーシャンプー」又は「フェザーシャンプー」を直想させるほど、当業者及び需要者間に著しく著名商標となったことは寸疑の余地のないところである。」故に、「商品の出所について混同を生じるおそれはない。」

(審決の判断)

審決は、請求人らの主張は、本件商標の登録査定前から羽根印、フェザー銘商標が既に請求人らの使用により有名であったから出所の混同を生ずると主張しているものであり、被請求人の主張は、本件商標を付した商品の発売は本件登録出願後(翌一〇月)であるが、本件商標の登録前既に「花王フェザーシャンプー」といえば、被請求人を直想させる程著名商漂となったから登録査定時には商品の出所について混同を生ずるおそれはないと主張して争っている旨の、双方の主張を摘示した上で、「按ずるに、……そうだとすると、本件商標をその指定商品に使用するときは、商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものと認めざるを得ない。」としているのである。

これを要するに、以上のとおり、審決は、当事者双方の主張、殊に争いがある事実関係の存否の時点は「本件商標の登録査定前」であることを事実摘示した上で、判断を示しているのであるから、その判断が、登録査定時を基準としてなされ、その結果、出所混同のおそれありとされたものであることは疑いをさしはさむ余地のないことである。

原告が指摘する「被請求人の提出にかかる……混同を生ずるおそれのあったものといわねばならない。」との部分は、判断基準時を登録出願時とした旨判示しているのではない。その位置は、被請求人の主張が、昭和三〇年一〇月出願後使用開始し昭和三三年六月二三日の登録前には既に花王フェザーシャンプー即花王石鹸株式会社と直想される程著名となったから、査定時に於いて商品の出所の混同の虞はない旨の主張であることを摘示した上で、この主張に対し判断して、商品の出所について混同を生ずる虞ありと述べ、登録査定時についての判断を示した後に続く部分の判示説明であるから、頭の中では、判断基準時を登録査定時に置いて文が進められていること勿論である。しかも、この部分は(本件商標の登録前既に直想させる程著名であった旨の)被請求人の主張排斥の説示部分である。その見地から原告指摘部分を理解すれば、次の趣旨に解釈される。

すなわち、被請求人が本件商標を商品シャンプーに使用し始め広く認識されることが認め得るとしても、それは本件商標の出願後の使用開始にかかるものに過ぎず、登録査定時まで僅々三二ヶ月足らずのことに過ぎない。ところが、被請求人の使用開始よりも前である本件商標登録出願時よりも更に以前に既に請求人等引用の商標はその使用する商品安全剃刀について、広く国内に知られていたものでありフェザーの文字は本件商標と殆ど同一の態様において使用されていたものであることは証拠上認めることができる以上、本件で被請求人の主張する本件商標登録前に於いても勿論右事由は存するのであるから本件商標は、請求人引用の商標と商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものといわねばならない、との趣旨である。

「本件商標登録出願時には」という語は、「既に上記するとおりの事由が存する」にかかるだけであって、判断基準時を出願時とのべているのでないことは行文の流れから十二分に理解することができる。

よって、判断基準時に所論の違法はない。

2 その2の主張は争う。

本件商標は、その登録査定時において商品の出所につき混同を生ずる虞があったものである。

旧商標法第二条第一項第一一号に所謂「商品ノ誤認又ハ混同ヲ生ゼシムル虞アルモノ」とは、他人である請求人等、すなわち被告等の業務にかかる商品をあらわす請求人等引用の各商標が、需要者の間に著名になっていることを必要とするものである。

換言すれば、著名商標として世上一般に知れ亘っているが故に、この商標と紛らわしい商標を被請求人即ち原告が使用すれば商品の出所について混同を生ずるという論理が本条を貫いているものと解される。

したがって、商品の出所の混同を生ぜしめる虞があるか否かの判断に当って大切な要件事実は、

イ  原告の使用する「花王シャンプー」や「月のマーク」及び本件「花王フェザーシャンプー」の商標が如何に著名であったかという事ではなくて、請求人である被告等の業務にかかる商品をあらわすものであるところの被告等引用の各商標が本件登録査定時に於いて、著名商標として需要者間に知れ亘っていたという事実こそが要件事実であり(この点に於いて原告の詳論は的を外れている。)、

ロ  原告の登録出願した本件商標が、被告等引用の各商標(別紙2及び3記載の商標)を連想させ紛らわしいこと、

ハ  原告の本件商標の指定商品シャンプーと、被告等引用の商標を付する商品安全剃刀とが関連商品であること、

である。

(著名商標であったこと)

被告等が、原告の本件商標の登録を無効とする理由に引用する商標は、別紙2及び3に掲記のとおりの構成から成る

①登録第二三七〇三二号商標

指定商品 旧第8類利器及び尖刃器

登録出願 昭和七年三月一二日

登録 同年九月三〇日

更新登録 昭和二六年一一月二九日

同四八年四月一二日

②③④⑤⑥(別紙2記載)剃刃に使用する商標

⑦登録第二九一三〇一号商標

指定商品 旧第8類利器及び尖刃器

登録出願 昭和一一年一一月三〇日

登録 同一二年六月二二日

更新登録 同三二年八月一九日

同五三年三月六日

その他被告等の「印が羽根で、銘がフェザーである」商標として挙げる登録商標

⑧登録第四一七八九四号商標

指定商品 旧第5類歯磨及び他類に属せざる洗料

登録出願 昭和二六年九月五日

登録 同二七年一一月六日

である。

しかして、被告等は右「印が羽根で、銘がフェザーである」各商標を昭和八年以降剃刃に使用し、その大量生産と大量広告と大量販売とによって、本件商標の登録査定時(昭和三三年四月七日)以前から既に、当業者及び需要者間に著しく著名になっていたものであり、著名商標として世上一般に知れ亘っていた。

先ず生産であるが、被告フェザー安全剃刀株式会社(旧商号 日本安全剃刃工業株式会社)の剃刃の生産量は左の通りに推移した。

昭和七年創業当時 月産 二〇万枚

昭和二七年 月産 六五〇万枚

昭和三一年 月産 一億二千万枚(全国の総需要の八割)

そして同被告は、登録第二三七〇三二号商標そのもの又はこれを基本とした別紙2の②の商標を剃刃の現品、包装、広告等に最初から使用し、この商標は昭和二八年以前から有名となっていた。併せて登録第二九一三〇一号商標(別紙3の⑦、上方六分の一幅の仕切り内に「FEATHER」と横書きし、中央空白部を対角線で二分した右側三角形内に三角形の鱗を背に二本の羽根を結び合わせて表わした商標)を剃刃の容器、包装、広告に使用し続けた。

次に広告であるが、別紙2の①又は②若しくは③の商標を小さく示し本件商標での注目の焦点である「フェザー」そっくりの文字商標を「フェザー剃刃」と特筆大書して新聞、雑誌、全国の鉄道沿線の立看板、東京駅を初め主要駅の掲看板、目貫の建物のネオンサインの広告に盛んに使用した。また、ラジオの商業放送が始まって以来、ラジオとテレビで「フェザー剃刃」の名前を宣伝した。そしてこれらの広告費は昭和二四年一月から同三三年三月まででも四億七千六百万円の巨額に上っている。

次いで販売であるが、被告フェザー商事を発売元としてなされた。そして剃刃の一枚ずつの包装には羽根印フェザー剃刃と書き、また一〇枚入りの紙箱には「羽根フェザー剃刃」と記して剃刃を販売した。

このように、長年に亘る大量生産、大量販売、大量広告によって、取引者及び需要者たる一般世人は、剃刀の商標としての「フェザー」の外観と、フェザーの称呼とを繰り返し見、かつ繰り返し聞いて強記している。換言すれば、大量広告によって世人一般に知らせ、加えるに良品の大量販売によって、全国総需要の八割を占める需要者及びその周辺の人々に熟知させたのである。

のみならず、昭和二八年二月二六日被告等の創立当時の商号の要部を被告等引用の各商標(別紙2及び3掲記)の称呼に相応した「フェザー」に変更したので、右各商標が同一称呼を持つ被告等を表わすものとしても広く世上に認識されているのである。

これを要するに、被告等引用の各商標は、本件商標の登録査定前には勿論、登録出願前においても既に著名商標として世上一般に知れ亘った有名商標であった。

(紛らわしい商標であること)

イ  原告の本件商標(「花王 フェザー シャンプー」)は、その構成上

最も注目され易い白抜きの輪郭内の

中央に

大きく(他の花王、シャンプーの文字よりも大)

赤で

「フェザー」と書いたものを

酒落れた楕円で囲み

これを斜め右上りに据えて異様にした部分

が特に目立ち、これが本件商標の主要部であって、「フェザー」の呼び名が自然に出る。

殊に、本件商標をつけるシャンプーは安価である関係上、需要者の商標観察は粗雑であり、種々雑多の付記までには目を通さずパッと目につく中央の主要部のみを見、また「フェザー」と口にする。その証拠に、販売店の本件商標を付したシャンプーの納品書には「フェザー」と書いてあるし、原告も昭和三四年商標登録願第二〇四一三号商標の登録異議申立事件で、本件商標が「フェザー」と言われることを自認している。

かくの如く、本件商標の中央に顕著に表わされた「フェザー」の文字は独立して商品識別の標識の機能を有するものであるから、これにより「フェザー」の呼び名が自然に出るものである。

ロ  他方、被告等が引用している別紙2及び3掲記各商標は、その構成は前記のとおりで、同一の「フェザー」の文字と二本の羽とを有するから「フェザー」の称呼と観念とを生ずるものである。

以上の通りで、本件商標は有名なフェザー剃刃と同じ呼び名の、而も似通った文字フェザーを持ち、更に本件商標の「フェザー」の文字は、被告等引用の「フェザー」の文字と殆ど同一の態様で使用されていて非常に紛らわしい。

それ故、本件商標を持つフェザーシャンプーが市場に出れば、当業者でない一般普通の需要者はそれをフェザー剃刀本舗である被告等から出したものと思い、商品の出所の混同を生ずる。

ハ  花王とフェザーと著名商標同士の組合せ商標は、一方の花王が他方のフェザーを従属させることはできない。蓋し、著名商標である両者は各自犯自の出所表彰力を堅持しているからである。

したがって、本件商標に「花王」があり、又人面を象った「月のマーク」が小さく併用されていることによって右の事実は動かない。まして、本件商標にあっては、「花王」や「シャンプー」の文字よりも一きわ大きな文字で中央に赤色でフェザーと書かれ、それのみでなくその文字を酒落れた楕円で囲み、これを斜め右上りに据えて異様に目立つようにして使用されているものであるから、被告等引用のフェザー商標との紛らわしさは大である。

(シャンプーと安全剃刀とは関連商品であること)

原告の本件商標の指定商品シャンプーと被告等引用の商標を付する商品安全剃刀とは関連商品である。

何故ならば、

イ  何れも美容又は清潔の用に供されるものである。

ロ  同一場所である薬局、小間物店、化粧品店、スーパーマーケット、デパート等で何れも販売されているものである。

ハ  同一人に於いて何れもが製造されることもある。(例えば資生堂剃刃、資生堂中性シャンプーの如し。)

ニ  被告フェザー商事は安全剃刀の発売元であるが、同時に爪切、爪ヤスリ、マニキュアセット、毛髪ハサミ等の女性の化粧道具を取り扱い販売しているから、一歩を進めてシャンプーも取扱うようになったと思われても不思議はない。

からである。

(結論)

本件商標をその指定商品に使用するときは、著名商標を付した有名なフェザー剃刀と同じ呼び名の、しかも似通った大文字フェザーをもつフェザーシャンプーが市場に出ることとなり、取引者でない一般普通の購買者はそれをフェザー本舗である被告等から出したものと思い、商品の出所について混同を生ずるおそれのあることはいうまでもないことである。

3 その3の主張は争う。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求の原因一の事実中、昭和三五年審判第四九六号事件について昭和五四年一二月一二日「登録第五二二五七五号商標の登録はこれを無効とする。」との審決があり、その謄本が昭和五五年一月一九日に原告に送達されたことは当事者間に争いがない。そして、同項中のその余の事実は《証拠省略》によってこれを認めることができる。

二  請求の原因二の事実は当事者間に争いがない。

三  そこで、原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。

1  原告は、審決には、旧商標法第二条第一項第一一号該当性の判断基準時を、本件商標の登録出願時とした違法がある、と主張する。

旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第二条第一項第一一号の規定に該当するか否かの判断は、原告主張のとおり、登録許否の決定の時、すなわち、査定又は審決の時を基準として決定すべきものと解するのが相当である(同旨、東京高裁昭和三七年四月二六日判決、行裁集第一三巻第四号第六六四頁参照)。このことは、被告らも格別争っている訳ではない。

そこで、審決の内容についてみるに、《証拠省略》によれば、なる程、審決には原告が指摘するように、「被請求人の提出にかかる乙第八号証の各号によって……を認めることができるとしても、それは、本件商標の出願後の使用開始にかかるものであって、本件商標登録出願時には、既に上記するとおりの事由が存する以上、本件商標はその登録出願前から広く取引者、需要者間に知られた「フェザー」の称呼を生ずる引用の商標と商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものといわねばならない。」と記載されている個所のあることが認められるから、この記載個所のみからすると、原告の主張は一応もっとものようであるが、他方、《証拠省略》によれば、右の記載個所は、審決が、「そうだとすると、本件商標をその指定商品に使用するときは、商品の出所について混同を生ずるおそれのあったものと認めざるを得ない。」と述べて審決としての結論を示した後に記述した附加的部分に属することが認められ、審決の全文を精読すれば、前記記載個所は、「被請求人の提出にかかる乙第八号証の各号によって被請求人が本件商標を商品・シャンプーに使用し始め広く認識されたことが認められるとしても、それは本件商標の登録出願後に使用が開始されたもので、登録査定時までの僅か三二ヶ月足らずのことにすぎない。そして、被請求人の右使用開始よりも前の本件商標登録出願時よりも更に以前の時点において、既に請求人らの引用する商標がその使用する商品安全剃刀について広く国内に知られていたものであり、「フェザー」の文字が本件商標と殆ど同一の態様で使用されていたことが認められる以上、右の事由は本件で被請求人が主張する本件商標登録前(すなわち登録査定時)においても勿論存在したと認められるから、本件商標は請求人引用の商標と商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものといわなければならない。」との趣旨を記載したものと解することができるから、原告の主張は理由がない。

2  原告は、審決が、本件商標につき、その登録査定時(昭和三三年四月七日)において商品出所の混同を生ずるおそれがあるとしたのは事実誤認である、と主張する。

よって、この主張の当否について検討する。

(本件商標の構成とその登録)

左の事項は、被告らの明らかに争わないところである。

本件商標は、旧第五類・シャンプーを指定商品として、昭和三〇年九月一〇日登録出願、昭和三三年四月七日登録査定、昭和三三年六月二三日登録第五四五五六号外一三件の商標と連合の商標として登録されたもので、昭和五三年八月二日商標権存続期間の更新登録を経由している。

そして、本件商標の構成は、別紙1に記載のように、上中下の三段に緑色と銀色とからなる波形の模様を表わし、その中央部の模様は上下の模様よりも幅を広くし、その中央部を横長楕円状に白抜きにした空間部に、左肩部に「花王」、右辺下部に「シャンプー」の文字を黒色で左横書きし、この両文字の中間に、これらの文字より大きく「フェザー」の文字を赤色で右肩上りで左から斜め右上へ横書きし、この「フェザー」の文字を、その下中央から右廻りに細長い右上りの楕円を画きその末端を始まりの下方に重ねた赤色の縁で囲み、横長楕円の右側下方に左向きの人面に象った三ヶ月を黒色の線書きして成るものである。

(引用商標の構成とその使用状況)

審決がその理由の中で引用する商標が、別紙2及び3に記載のとおりの構成から成る、①旧第八類利器及び尖刃器を指定商品として昭和七年三月一二日登録出願、昭和七年九月三〇日登録、昭和二六年一一月二九日及び昭和四八年四月一二日その商標権存続期間の更新登録が経由された登録第二三七〇三二号商標、剃刃に使用する別紙2の②③④⑤⑥の商標、及び⑦旧第八類利器及び尖刃器を指定商品として昭和一一年一一月三〇日登録出願、昭和一二年六月二二日登録、昭和三二年八月一九日及び昭和五三年三月六日その商標権存続期間の更新登録が経由された登録第二九一三〇一号商標、その他審判請求人が「印が羽根で、銘がフェザーである」商標として挙げる登録商標及び使用商標、並びに、⑧旧第五類歯磨及び他類に属せざる洗料を指定商品として昭和二六年九月五日登録出願、昭和二七年一一月六日登録の登録第四一七八九四号商標であることは、当事者間に争いがない。

そこで、これら引用商標の使用状況についてみるに、《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。

被告フェザー安全剃刀株式会社は、昭和七年七月一日に設立された会社で、当初は関安全剃刀合資会社と称する合資会社であったが、その後株式会社となり、日本セフテイフェザー株式会社、日本安全剃刀株式会社、日本安全剃刀工業株式会社と逐次商号を変更し、昭和二八年二月二六日に現在のフェザー安全剃刀株式会社の商号となって今日に至っているが、設立当初より今日まで引続いて安全剃刀の製造販売を業としている。その生産、販売量は、

昭和七年創業当時    月約二〇万枚

昭和二七年      月約六五〇万枚

昭和三一年   月約一億二〇〇〇万枚

で、昭和三一年当時には、全国総需要の約八割を生産、販売していた。

これら安全剃刀の販売に当っては、販売当初から、別紙2①に記載のとおりの羽根印の登録第二三七〇三二号商標そのもの、又はこれを基本とした別紙2②に記載のとおりの羽根印に「TRADE MARK"FEA-THER"」の文字を加えた商標を、そして昭和一一年頃からはこれらの商標に併せて、別紙3⑦に記載のとおりの羽根印と「FEATHER」の文字を描いた登録第二九一三〇一号商標を、安全剃刀の現品、容器、包装、広告等に使用してきた。

また、これら安全剃刀の広告においては、別紙2の①、②若くは③の商標を小さく示し、かつ「フェザー」の文字商標を「フェザー剃刃」と特筆大書して、新聞、雑誌、全国の鉄道沿線の立看板、主要駅の掲看板、都市の目抜きの建物のネオンサインの広告に盛んに使用した。更に、ラジオ・テレビの商業放送が始まってからは、ラジオ・テレビで「フェザー剃刃」の名前を屡々宣伝することもした。これらの広告費は、昭和二四年一月から昭和三三年三月までの期間だけでも合計約四億七六〇〇万円の額に達している。

その上、昭和二八年二月二六日には、被告フェザー安全剃刀株式会社とその安全剃刀の発売元である被告フェザー商事株式会社は、それぞれ従来の商号の要部を、別紙2及び3の各商標の称呼に相応した「フェザー」に変更して、現在のような商号に改めた。

以上のような、長年に亘る大量生産、大量販売、大量広告並に商号の変遷によって、取引者及び需要者たる一般世人は、昭和三〇年九月一〇日の本件商標の登録出願時点においても、また昭和三三年四月七日の本件商標の登録査定時点においても、別紙2及び3の各商標を充分に熟知し、これらの商標が被告らの商品安全剃刀を表わすものであることも広く認識して、これらの商標は世上一般に知れわたった著名商標となっていた。

(本件商標の出現とその使用状況)

本件商標は、既述のとおり、昭和三〇年九月一〇日登録出願、昭和三三年六月二三日登録されたものである。

そして、その使用状況についてみるに、《証拠省略》を綜合すれば、次の事実が認められる。

原告は、明治二三年に「花王石鹸」を発売して以来、本件商標の登録出願時点までに「花王」の名を冠した百種類に及ぶ身体洗浄剤を発売し、これら製品には人面を象った三ヶ月マーク(以下、「月のマーク」という。)が描かれていた。その間、原告は、昭和七年以降、「花王シャンプー」を発売し、昭和三〇年一〇月から本件商標を付したニュータイプのシャンプー「花王フェザーシャンプー」を発売するに至った。

この新製品「花王フェザーシャンプー」販売のために、原告は新聞、ラジオ、テレビ、雑誌、車内広告、駅頭広告、街頭広告、店頭広告等、大量の広告宣伝を行ない、その額は昭和三〇年一〇月から昭和三三年五月までの期間だけでも総額五億円を超えるものがある。

これらの広告、宣伝においては、常に「花王フェザーシャンプー」と一連に表示し、かつ、「月のマーク」を併せて広告面に描き出していた。

原告が発売した「花王フェザーシャンプー」は発売以来好調な売行きを示し、その売上高は、

昭和三一年度 約五億八〇〇〇万円

昭和三二年度 約一二億円

昭和三三年度 約一六億七〇〇〇万円

をそれぞれ上廻る額となっていた。

(出所混同のおそれの有無)

そこで、以上のような事実関係のもとで、本件商標がその登録査定の時点において商品の出所につき混同を生ずるおそれがあったか否かの点について考える。

まず、本件商標は、既述のとおりの構成で、最も注目され易い白抜きの楕円内の中央に大きく赤色で「フェザー」と書いたものを更に赤色の縁で囲んでいるから、そのほかに「花王」の文字及び「月のマーク」が描かれているとはいえ、この「フェザー」の文字が独立して商品識別の標識の機能を営むこととなり、これより単に「フェザー」の称呼をも生ずるであろうことは否定できない。その上、本件商標が使用される商品はシャンプーという安価な日用品であるから、一般需要者の間で安直かつ簡略に右のように称呼される可能性は一層濃いものがあると考えられる。現に、《証拠省略》によれば、「花王フェザーシャンプー」の小売店が発行した納品書には、「花王フェザーシャンプー」のことを単に「フェザーシャンプー」と表示していることが認められる。

以上のことは、昭和三三年四月七日の本件商標の登録査定時点において考える場合に、それまでに本件商標若くはこれを付した「花王フェザーシャンプー」について、さきに認定のような方法による大量の宣伝広告、商品の大量販売がなされていた事実を考慮に入れても、その結論を異にすべきものとは認められない。

他方、審決が引用している商標は、既述のとおり、別紙2及び3に記載のとおりのものであるから、これらから「フェザー」の称呼が生ずることは明らかであり、本件商標と引用各商標とは、本件商標の登録査定時点においても、「フェザー」の称呼を共通にすることのある、相紛らわしい商標であったというべきである。

次に、本件商標の指定商品シャンプーと引用商標の使用される安全剃刃の関連性についてみるに、両者は共に美容又は清潔の用に供される商品で、両者が屡々同一場所である薬局、化粧品店、小間物店若くはデパートの同一区域で販売されていることは公知の事実であり、《証拠省略》によれば、「花王フェザーシャンプー」を製造販売している原告においても嘗つては安全剃刀の刃を製造販売したことがあること、フェザー安全剃刀の発売元である被告フェザー商事株式会社は、昭和三〇年当時においても、安全剃刀の販売に当ると同時に爪切、マニキュアセット、毛髪ハサミ等の女性の化粧道具を製造販売していたことが認められるから、両者はその製造及び販売径路において関連する商品ということができる。

そうすれば、本件商標は、旧第五類シャンプーを指定商品として昭和三〇年九月一〇日登録出願昭和三三年四月七日登録査定されたものであるが、この登録査定の時点において、それまでに別紙2及び3に記載の各商標が被告らの商品安全剃刀を表わすものとして既に世上一般に知れ渡った著名商標となっていたのであり、本件商標はこれら著名商標と相紛らわしい商標であり、かつ、これら著名商標の使用されている商品と本件商標の使用される指定商品とは製造及び販売の径路において関連性を有する商品であるから、本件商標がその指定商品に使用されるときは、「フェザー」の称呼を有する著名商標を付したフェザー剃刀と同じ「フェザー」の呼び名で称呼されるフェザーシャンプーが市場に出廻ることとなり、一般購買者はそれを被告らの製造販売にかかる商品と思い、商品の出所について混同を生ずる虞れがあったとせざるを得ない。

原告は、たとえ本件商標から「フェザー」の称呼が生ずることがあったとしても商品出所の混同を生ずる虞れはなかったと主張し、事実摘示欄記載のとおりに各種の事実関係を指摘するが、それらの事実関係を考慮に入れてみても未だ前記判断を覆すことはできない。

この点についての審決の認定に誤りはなく、原告の主張は理由がない。

四  よって、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条及び民事訴訟法第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長判事 石澤健 判事 藤井俊彦 清野寛甫)

〈以下省略〉

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